コラム

【第1回】幼少期における非認知能力を伸ばすことの重要性

「お友だちと仲良く遊べているかな」「うまくいかないとき、どうやって気持ちを切り替えているのかな」
――保護者の皆さまが日々気にかけておられるのは、こうした心の育ちではないでしょうか。子育てに関して、近年教育経済学の分野で急速に研究が蓄積されているのは学力テストの点数には表れない力、すなわち「非認知能力」です。

非認知能力とは、意欲や粘り強さ、感情のコントロール、他者との関わり方など、学力テストやIQテストでは数値化できない能力の総称です。
これまで将来の収入や社会的成功を左右するのは学力(認知能力)であると考えられてきましたが、実際には学力によって説明できる部分はごく一部にとどまることが研究によって明らかになっています。

幼少期に社会性や自己コントロールを育むための働きかけを行った海外の研究があります。
この研究では、働きかけを受けた直後の学力には目立った変化がみられなかったものの、その後の10代後半になって学力が向上しただけでなく、成人後の年収や結婚する確率までもが明確に高くなることが確認されています。この結果は、幼少期の非認知能力への働きかけが、目先の学力以上に長期的な人生の質を左右しうることを示す重要な知見といえます。

また、幼少期に身についた非認知能力はその後の学力を伸ばす一方、逆に学力を先に伸ばしたとしても、それが非認知能力の向上につながるわけではないことも研究で示されています。つまり、学習指導に先立って非認知能力という土台を整えておくことが、結果的に学びやすい子どもを育てることに直結するのです。

保育の現場で日々繰り返される、順番を待つ、友だちと折り合いをつける、物事を最後までやり遂げる
――こうした一つ一つの経験の積み重ねこそが、エビデンスに裏づけられた、お子さまの将来を支える確かな土台になるのです。

中室牧子(慶應義塾大学教授)

有限会社アルモニー